22年前、私がまだ独立する以前に設計させて頂いた家を時々訪問しています。画家夫婦の住宅で南ヨーロッパの古い教会をイメージし、素焼きのオレンジ瓦と白い漆喰の外壁でデザインした住宅です。当時20代半ばの私に何もかも任せて頂き、その後の設計活動に大きな影響を与えてくれた現場でもありました。
ご夫婦は、大変な愛着を持ってこの家に住まわれ、化粧梁や無垢板などいたるところに使った本物の木の部分が、とてもいい色に艶がでて、何とも言えない雰囲気を醸しだしています。訪れる度に「本物の木は味が出るな〜」と思います。
現在、一般に建築されている住宅のほとんどが、中も外もプラスチック製でできている事を皆さんは、ご存知でしょうか?外壁も内壁も、ドアや枠類までも一見木や石に見える物が、実際は工業製品であるプラスチック製なのです。
安価、製品の均一製、取付が楽等、施工サイドから見ると利点も多くありますが、時が過ぎると見るも無残な姿になってしまいます。考えてみてください。いくら陶器は割れるからといって、プラスチックの皿で毎日食事をする気になれるでしょうか?少し年月が経ったプラスチックの食器の貧相さはどうでしょう。
自然素材でつくった家は、使い込むほどに味が出てきます。住む人が愛着を持って「大切にしたい」という気持になるような家は、実は本当の長持ちする家であり、そんな家づくりこそが私たちの使命だと思っています。